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『中世 瀬戸内海の旅人たち』

中世 瀬戸内海の旅人たち (歴史文化ライブラリー)

中世 瀬戸内海の旅人たち (歴史文化ライブラリー)

せっかく愛媛にきたんだし、愛媛の歴史を少しは勉強するか―と思ってたら、いつのまにか中世海賊の話にのめり込んでしまっていたでござる……という読書遍歴も割と大詰めかなって感じ。いろいろ読んで多少イメージはできてきたが、今回の『中世 瀬戸内海の旅人たち』でとりあえずの区切りにしたいかな。

blog.daruyanagi.jp

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本書のメインターゲットは、海賊ではなく、瀬戸内の航路とか港とか。歴史上の人物の日記なんかを頼りに、当時の瀬戸内海の海運事情を浮き彫りにしてみましたよーって感じの内容だった。

  • 高倉院の厳島参詣
  • 足利義満の西国遊覧
  • 宣教師たちの船旅
  • 島津家久の伊勢参り
  • 島津義弘の上洛

ちょっと時代を外すけど、参勤交代の船旅なんかもあったらよかったかな。それはまた別の本をあたるか。大航海時代なんかに比べるとスケールは小さいけど、地味な技術改善や航路開拓などにより、時代によって少しずつ“海の道”が変わってるのはちょっと面白いかも。

  • 古代から中世にかけて:山陽沿岸コース
  • 室町以降:防予諸島を抜けるコース

播磨灘や伊予灘って、“灘”ってつくぐらいだから難所なんだろうけど、今の船舶技術だとそれを実感することあまりないし(そもそも昔みたいにしょっちゅう寄港しないしなぁ)、こういう本を頼らないと、“海の道”のイメージって沸きにくい。また、政治的状況に左右されやすく、容易につけ変わっちゃうのも“陸の道”とは少し違うところかもね。

あと知ってる地名がいろいろ出てくるのも楽しいよね(近所でいえば、堀江とか三津とか)。新しく覚えた地名なんかもあって(覚えたというか、名前だけ知ってたのがちゃんと定着した感じ)、先にこっちを読んでいれば、これまでの読んだ本で地名で苦しんだりせずに済んだかなぁと少し後悔した(いや、今まで苦しんだからこそ、この本が苦痛でなかったともいえるかな?)。

最後に、本題とは全く関係ないのだけど、港の類型は参考になった。

港のタイプ 地形 メリット デメリット 中世の代表港
室・池型 海岸線から円弧上に湾入・周囲を山が囲う 風待ちがしやすい 直航可能になると廃れる 備前日比、備後鞆
水門(みなと)型 河口にできた入江 内陸へのアクセス 砂で埋まる → 港湾機能を失う 安芸高崎、讃岐宇多津
瀬戸・水道型 島と島に挟まれた水路脇 幹線航路へのアクセス 強いて言えば素人には危険 下関、上関、尾道、牛窓
砂嘴・砂洲型 河川が運ぶ砂礫が天然防波堤になる 波が静かで、干満の差があまりない - (干満が激しい瀬戸内海には少ない)豊後杵築、淡路由良

古い港を訪れたら、分類してみるとその機能がよくわかるかも。