だるろぐ

明日できることは、今日しない。

『政治算術』

政治算術 (岩波文庫 白 101-2)

政治算術 (岩波文庫 白 101-2)

経済学の始まり(のひとつ)が、『政治算術(Political Arithmetic)』という本にあったという事実は、充分示唆に富んでいる。

私がこのことを行う場合に採用する方法は……比較級や最上級の言葉のみを用いたり、思弁的な議論をする代わりに、……自分の言わんとするところを数(Number)・重量(Weight)または尺度(Measure)を用いて表現し、……個々人の移り気・意見・好み・激情に左右されるような諸原因は、これをほかの人たちが考察するのに任せておくことである。

経済(学)とは、すなわち計量ですよ、計量できることしかやりませんよ、計量できること以外は対象外ですよ。

対象を絞ることで経済学は緻密になったけれど、一方でこれは贈与経済に対する分析の放棄でもあるし、贈与経済を交換経済に取り込むことの積極的な肯定でもあったと思う。贈与経済には規範という「制約性」があったけれど、交換経済には薄く、むしろ「無制約的」であるとさえいえる。贈与経済は新規性や外部との交流に対して否定的な部分をもつけれど、交換経済にはそれがない。このパラダイムシフトが、産業革命へつながっていったのではないかな。

貨幣の思想史―お金について考えた人びと (新潮選書)

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