『零戦撃墜王』
- 作者: 岩本徹三
- 出版社/メーカー: 潮書房光人新社
- 発売日: 2013/08/02
- メディア: Kindle版
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この前『大空のサムライ』を読んだので、次は『零戦撃墜王』を読んでみた。
本書は中国戦線で目覚ましい戦果を挙げたのち、「瑞鶴」では戦闘機隊の一員として珊瑚海海戦に参加、そのあとはラバウルで活躍した岩本徹三海軍中尉の自叙伝的なもの。
撃墜機数二〇二機、うちラバウル上空の戦果一四二機―初陣の中国大陸から、真珠湾、ソロモン、比島、本土と、常に最前線の空戦場裡で死闘を繰りひろげ、みごとに勝ち抜いてきた空の勇者が書き遺した感動の空戦記録。日本海軍航空隊のトップ・エースとして活躍した第二次大戦撃墜王が描く勝利と鎮魂の青春譜。
読み物としては『大空のサムライ』に軍配が上がるけれど、こっちのほうが地に足がついている感じがある。個人的には艦載機乗りと基地航空隊の空気の違いなんかが興味深かった。
最前線の陸上航空部隊では、そのほとんどが、毎日、敵の交戦で日を送っていたが、空母勤務搭乗員は、いまのところ月に一回の作戦があれば上々の方で、そのほかの日は、飛行機にも乗らず、艦内でブラブラしている。
開戦前は月月金土木金金の猛烈な訓練を行っていた母艦搭乗員も、戦争も中盤に差し掛かると、燃料の不足、事故による機体損失の恐れからロクな訓練もできていなかったらしい。ピカピカの零戦は、後方にとどめ置かれた・ヒヨっ子が乗る空母艦載機のために取り置かれる一方で、最前線にはロクな補給もなく、機銃で穴の開いた機体にツギをあて、整備員が朝までかかって修理した機体を飛ばし、日に日に数と質が増していく敵機を相手に戦う。さぞかし不満のたまることだろうと思う。
それにしても、この戦果は俄かには信じがたいな。五機落とせばエースパイロットなのに……。とくに特攻による戦果は見積もりが甘いのかなと思う(個人の撃墜に関しては、周りの証言もあるだろうし、“盛っている”ということはなさそう)。
日本軍の特攻による被害は以下のページにまとめられているが、
本書で述べられているほどではなかった。けれど、実際に直掩し、突入を見送った機が実はたいした戦果を挙げていなかっただなんて思いたくもなかったろうし、著者を責めるべきことではない。もしかしたら、アメリカ軍はダメージコントロールが優秀だったので、見た目に大きな火災が起こっても、すぐに沈下され、結果として「損傷軽微」になっていたのかもしれないとも思う。
あと、三号爆弾は知らなかったかも。原理的には三式弾を戦闘機で使えるようにしたものなのかな?(写真が三号爆弾なのかどうかは自分は知らないけど、こんな感じだったんだろうと思う)敵編隊の中空で爆発させ、飛び散った破片などで一度に複数の敵機へ被害を与えるというもので、一度に14機を仕留めたことすらあったという。でも、アメリカ軍と違い、日本軍には近接信管なんかなかったので、操縦手のカンで間合いをはかり、時限信管で起爆させたみたい。そりゃ、一部の化け物エースじゃないと使いこなせないわな……。
ちなみに、“零戦虎徹”の話はなかったように思う。そりゃ、自分では書かんかw