だるろぐ

明日できることは、今日しない。

ごくごく簡単な砲の歴史

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別に専門家でも何でもないので、割とアバウトな感じです。ゴメンナサイ。

火砲の誕生

大砲(たいほう)は、火薬の燃焼力を用いて大型の弾丸を高速で発射し、弾丸の運動量または弾丸自体の化学的な爆発によって敵および構造物を破壊・殺傷する兵器(武器)の総称。火砲(かほう)、砲とも称す。

大砲 - Wikipedia

砲のご先祖様は「投石機」であると言われています。まぁ、「砲」って文字そのものも石偏がついてるしね。初期の投石機は機械的な力(張力・弾力と梃子の原理)を利用するものでした。

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所謂「カタパルト」で、ローマ軍が使っていた「オガナー(Onager)」や、弩弓「バリスタ(Ballista)」を単に大きくして石弾を発射可能にしたもの、

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アルキメデスが発明したとも言われる「トレビュシェット(Trebuchet)」(最古の記録は1165年東ローマによるもの)などが有名です。とくに「トレビュシェット」は最大のもので140キログラムの石を最大300メートルも飛ばすことができたといいます。

これらの投石機で飛ばすものは石だけではありませんでした。重量物ならば何でも打撃効果が期待できるので、砂袋が用いられることもありましたし、炎上を狙って藁や油などの可燃物を投じたり、ときには汚物や死体を飛ばして疫病の流行を狙う現代の生物兵器まがいのことも行われていたといいます。こうした用途でもわかるように、投石機・火砲はもっぱら陣地・都市・城塞の攻撃に用いられました。これは「野戦砲」(ナポレオンなんかが使ってる奴ですね!)が登場するまで続きます。

さて、火薬の爆発力で弾を飛ばす本格的な砲は、13世紀の中国(南宋)ではじめて出現しました。これが「射石砲(Bombard)」で、かの地では「実火槍」と呼ばれていたのだそうです。続いて中国を支配したモンゴル族は、中国で得た小銃・火砲を用いて世界を制覇しました。蒙古襲来で日本の武士がびっくりしたという“てつはう”もそうした火器の一種だったのでしょう。

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西欧に火砲が伝わったのは14世紀前葉と言われています(上図はイギリスのスコラ学者が残したスケッチ)。火砲を生んだ中国ではあまり大砲が発展しなかったのに対し、同程度の武力をもつ国同士の争いが絶えなかった西欧では、火砲が劇的な進化を遂げました。14世紀末ごろから糞尿(!)より硝石を作り出す知識が広まり、15世紀にはコンスタンティノポリス包囲戦などの重要な戦いで火砲が活躍するようになります(下図はトルコがコンスタンティノポリス包囲戦で用いたウルバン砲)。

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当時の火砲は戦場で製造する据え付け型の「臼砲(きゅうほう)」です。当時の技術では、巨大な金属の塊を運搬するのは困難でしたし、砲自体の構造も前装式の簡素なもので、現地で製造してしまう方がよっぽど理に適っていたからです。攻城戦での利用が前提だったので、製造に費やせる時間もたっぷりありました。

一方、臼砲は船にも搭載されました。こちらはもちろん既製のもので、陸上砲よりも小さなものだったでしょう。

16世紀にトルコとキリスト教国連合で戦われたレパントの戦いでは戦闘ガレー船が主体(衝角突撃と石弓・白兵戦)でしたが、大型帆船に大砲を装備した艦も何隻か参加しており、キリスト教国連合を勝利に導いています。とはいえ、当時の臼砲はまだまだ正確性・威力・射程のどれもが不十分で、相手を破壊するというよりも、相手を脅かすことに主眼が置かれていたようです。本格的な帆船同士の砲戦が行われるようになるには、大量の砲を搭載した「戦列艦」の登場を待たなければなりません。

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というわけで、海の話はちょっと置いておいて、陸上砲の話を進めていくことにします。

攻城から野戦へ

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(臼砲とカノン砲のイメージ)

さて、揺籃期の火砲はもっぱら攻城戦に用いられるものだと先に述べましたが、この強力な武器を野戦でも使えたら……と言うのは至極当然の発想でもあります。そこで、攻城用の大型臼砲とは別に、発射できる弾が小さくなるデメリットを甘受してでも、野戦で使える・既製の・機動性の高い臼砲が開発されていきます。これらの砲は、次第に砲身が長くなり、精度と飛距離が高くなっていきました――そう、「カノン砲」の登場です。

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(原始的な)「臼砲(Mortar)」は文字通り“臼(うす)”の形をしており、そこへ弾薬と弾を込め、「とりあえず発射できればいい」といった発想で作られていました。これを大きく・頑丈に作れば、より大きな弾が打てるため、攻城砲のような強力な大砲が作れるというわけです。

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一方「カノン砲(加農砲)」は、より精密で長い銃身をもちます。発射時のガスを銃身と弾丸で密閉し、その爆発力をより効果的に弾丸へ伝え、長い銃身で十分に加速させた結果、高い初速、飛距離、貫徹力をもてるようになりました。臼砲が山なりにドーンと弾を発射する(曲射。投擲するといった方がいいかもしれません)に対し、カノン砲は銃のようにまっすぐ目標物へ弾丸を発射し(直射または平射)、運動エネルギーで対象を貫徹・破壊します。

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(M777 155mm榴弾砲)

カノン砲の弱点は、臼砲よりも高い冶金技術を必要とし、コストがかかることです。そこで臼砲よりも精密で飛距離のある砲がほしいけれど、カノン砲ほどの強力な貫徹力は必要はなく、またそんな高価なものを揃えるお金もないという場合には、榴弾を発射できるスペックに留めた「榴弾砲(Howitzer)」が用いられました。

榴弾とは“てつはう”のように爆発の破片により目標物を破壊・殺傷するタイプの弾です(手榴弾も榴弾の一種ですね)。このタイプの弾は対象を貫くことには重きが置かれておらず、弾丸の初速はそれほど重要ではありません。火薬の装薬量も少なく、ゆえにカノン砲ほど頑丈である必要もないため、比較的安価で軽く、機動性に富みます。

一方、榴弾は厚いコンクリートで固められた要塞を砕いたりするのには少し非力かのしれません。そのときは徹甲弾が発射できるカノン砲の出番となります(大型の臼砲でひたすらデカい弾を送り込むという手もありますが)。カノン砲は榴弾も発射できるので、スペックだけ見れば榴弾砲の上位互換だと考えてもいいかもしれません。ただし、前述のとおり製造や運用の点でデメリットがあります。

また、分厚い装甲を打ち抜けるカノン砲は、艦載砲にも向いているでしょう。戦艦などに搭載される艦砲は、カノン砲の系譜につながるものと言えるでしょう。第一次世界大戦で装甲によろわれた戦車が登場すると、対戦車砲へも発展していきました。

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冶金学の発展により、カノン砲(とくに野戦で用いられる比較的軽量なカノン砲=野砲(Field Gun))が相対的に安価に製造できるようになると、榴弾砲の区別は次第にあいまいになっていきますが、大まかに言えば直射を目的とした口径長(銃身長)の長い砲がカノン砲、曲射を行う比較的口径長の短い砲が榴弾砲です。また、コストが安いことから、臼砲もカノン砲・榴弾砲と並行して長く使われました。そのなかには若干の銃身延長が図られた臼砲もあり、区別のむずかしさに拍車をかけています。

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そのほかにも、用途による区分もありました。野戦で用いられるカノン砲・榴弾砲は「野戦砲」とも呼ばれます。これらは一般的に駄馬・人力・自動車などで牽引されましたが、山岳地帯での運用を考えて分解・運搬が行えるより小型の「山砲」、砲兵科でまとめて運用するのではなく歩兵部隊が扱う「歩兵砲」、さらに航空機が登場するとそれを迎撃するために仰角を取れるようにした「高射砲(帝国海軍では高角砲)」などへ発展・細分化されていきます。

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(十四年式十糎高射砲)

まぁ、この辺りの分類は時代によっても基準が変わるし、割と現場のアバウトで感覚で行われることも多かったのではないかなーと個人的に想像しています。

砲の四要素と三大発明

ちょっと時代を下り過ぎました。時計の針を再び15世紀末当たりに戻しましょう。火砲で重要なのは「射程」「精度」「発射速度」「機動性」の4つですが、「機動性」については今までの部分でカバーできたと思います。そこで、この章では残りの3つの要素を飛躍的に向上させた3つの発明について触れようと思います。

後装式

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初期の大砲は、銃口から火薬と弾丸を装填していました。これを前装式といいますが、装填作業に時間がかかり、発射速度が遅いという弱点があります。火縄銃でシコシコやってるアレですね。

それに対して、銃身尾部から弾丸と弾薬を装填するのが「後装式」です。弾丸と弾薬をパッケージングしてしまえば、装填にかかる時間を劇的に短縮でき(機械化して自動装填にすることも可能)、「発射速度」を高めることができます。

後装式の大砲は15世紀末ごろまでに登場しており、フランキ式(仏郎機式)などが知られています。しかし、後装式は銃尾の閉鎖機構の設計が難しく、近代まで安全性、耐久性、保守性の点で前装式に劣っていました。

施条(ライフリング)

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「ライフリング」とは銃身に溝を掘って弾丸に旋回運動を与え、弾道を安定させる技術です。「射程」の伸張、長距離での「精度」向上が期待できます。ライフリングが施された砲を施条砲、そうでない砲を滑腔砲といいます。

ライフリングを施すことは15世紀終わりにオーストリアのウィーンで発明されました。当初は製作費の高さ、手籠めに時間がかかり発射速度が下がるなどの問題があり、なかなか普及しませんでしたが、19世紀中ごろにフランス陸軍のミニエー大尉が“椎の実型”の弾丸を発明すると小銃の世界で爆発的に普及。以後は“椎の実型”が銃弾の定番になりました。

大砲でのライフリング導入は小銃よりも遅く、アームストロング砲を初めとした後装砲が実用化された19世紀末頃になります。小銃と違い、前装式では弾丸の装填が難しかったためです。

(ただし、現代の戦車砲はライフリングが適さない弾丸を利用していうので、滑腔砲が主流です)

駐退機

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大砲を打つと、砲身や砲架が後退します。すると、次の射撃を行うまでに砲身位置の復元と照準の再計算などが必要になります。これを不要にしてしまうのが、発射後に砲身が自動で元に戻る「駐退機」です。

帆船時代の艦載砲は、発射の反動で砲が狭い船内で交代するのを防ぐためにロープで繋ぎ留めるなどの対策が施されていました(ロープが切れたらえらいこっちゃですね!)。また、初期の戦艦では大砲を傾斜したレールの上に載せ、後退した砲をすばやく元の位置に復元できるようにしていたといいます。

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そして19世紀半ば、バネ式の駐退機が登場。発射後に砲身が元の位置へ自動的に復元されるため、発射速度が飛躍的に向上しました(こうした機構を備えた砲は「速射砲」と呼ばれたりもします)。19世紀後半には、世界で初めて液気圧式駐退復座機を搭載した「M1897 75mm 野砲」がフランスで正式採用され、これが世界に広まっていきました。

現代の砲

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史上最大の砲は、第二次世界大戦期にドイツが開発した「80cm列車砲」です。これはマジノ要塞の攻略のために製造されましたが、航空機の登場で要塞が無力化したこと、戦後にミサイルが実用化されたことなどにより、こうした巨砲は意味を失い、製造されなくなりました。かつてのような大規模な野戦(会戦)はもはや行われないでしょうし、所謂“大砲”が活躍しそうな状況は想像しにくいものになっています。

とはいえ、砲そのものがなくなったわけではありません。

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たとえば、冶金学の発展により安価で原始的な「臼砲(Mortar)」はほぼなくなりましたが、同じような構造をもつ「迫撃砲(Mortar)」は現代でも重要な歩兵用火砲です。ライフリングなし、砲口からカポンと弾丸を放り込む前装式、駐退機なにそれ? って感じの極めてシンプルな火砲ですが、原理は曲射を行う臼砲に他なりません。

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また、榴弾砲も現役です。こうした砲の多くは自動可能な車体に取り付けられ、「自走砲」となっています。

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一方、カノン砲は野戦砲などとともに榴弾砲に統合されてなくなってしまいました。しかし、戦車砲や艦砲などはカノン砲の子孫と言ってよさそうです(戦艦という種別はなくなりましたが、艦砲はいまだ健在です!)。

ミサイルの登場により、砲の存在意義は確かに薄れました。「全部ミサイルでいいんじゃね?」という意見もあります。しかし、1発あたりのコストではミサイルより断然安いですし、コンピューター制御により精度も向上しています。誘導ミサイルへがアンチシステムによって無効化されても、砲撃ならば問題はありません。そんなわけで、砲が完全に消滅するのは、あるとしてもかなり先のことになりそうですね。